長年の不妊治療の末に、子どもができない夫婦がいる一方、身ごもった子どもを育てられない親がいる。著者は両者をつなぐ橋渡しのボランティアをしている産婦人科医。
養子制度にには、普通養子と特別養子という二種類があるらしい。この違いがよくわからなかったのだけど、調べてみると、普通養子というのは、実親との関係は続き、相続などもできるらしい。戸籍上、二組の親がいる状態。戸籍には「養子」「養女」と記載される。
一方の特別養子というのは、実親との関係は完全に絶たれ、戸籍上も養い親の実子として「長男」「長女」などと記載される。法律を読むと、子どもが6歳未満で実親による養育が困難な場合に認められ、実親の経済的理由で育てられない、虐待などの悪環境にいる子ども利益を考えて作られた制度のよう。
『赤ちゃんの値段』を読んで、国際養子縁組の問題について考えさせられたのだけど、では国内での養子縁組を増やすにはどうしたらいいのだろうというと、よくわからなかった。
児童相談所を介して養子や里子を見つけようとする場合、生まれたばかりの赤ちゃんはやってこないらしい。2歳までは乳児院で育てられ、養子や里子に出されるのはその後でないといけないという決まりがあるらしい。その理由はいろいろあるのだろうが、なるべく小さい時から自分たちの手で育てたいという夫婦も多いのだから、これは制度的な欠陥ではないかと思う。生まれて間もない赤ちゃんを養子にしたい夫婦は、公的機関ではなく、ボランティアに頼るしかない。
この本に登場する夫婦でも、まず、児童相談所に行ったけれど、自分たちの思い描く養子像とは違い失望したというエピソードがあった。やはり、一般の人が赤ちゃんの養子をもらいたいと思った場合に、公的機関がまったく頼りにならないというのは問題じゃないだろうか。
だいたい、特別養子縁組という制度自体が一般には知られていない。養子をもらうということも、今の日本社会ではあまり一般的ではなく、養親たちは、子どもへの告知と同時に、近所や親戚へ告知すべきかどうか悩んでいる。
十代での妊娠や、望まない妊娠によって中絶させられる子どもたちも多い。中絶という選択肢のほかに、養子縁組という選択肢があるということがわかり、いざというときには養子に、と中絶せず出産し、結果的に自分の手で育てることにした事例もあるという。
また、養親となる夫婦の側からすれば、つらい不妊治療で疲れ切った末に、養子縁組で子どもをもらい充実した日々を過ごしているカップルもいる。著者は、養子縁組を希望する夫婦にはまず不妊治療を勧めているようだ。やるだけやって、それでもだめなら…ということらしい。
だが、この本に登場する女性たちの回想からは不妊治療のつらさも伝わってくる。肉体的にも精神的にも、金銭的にもダメージは大きい。望まない妊娠で出産して子どもを他人に譲らなければならない親と、どちらがつらいかというと、同じかそれ以上かもしれないと思う。
印象的だったのは、養親となった女性が、実親の女性に対して「この子を産んでくれてありがとう」と一様に感謝の言葉を述べていること。実親にとっても、養親にとっても、子どもにとってもいい結果になるのなら、もっとこの制度を普及させたほうがいい。少子化だというけれど、不妊治療をしているカップルが多い一方、中絶する女性たちも多いらしい。この制度によって、少しでも救われる赤ちゃん、カップルが増えるといいなと思う。
幸い、著者の医師は実親とも養親とも十分な面接をして何度も意思確認をし、子どもを適切な家庭へと譲り渡しているようだが、こういう人ばかりではないだろう。意思確認もそこそこに、子どもを取り上げ養親に引き渡し、その後のケアもなしに子どもの成育状況も確認しない、というような仲介者もいるのではないか。しかもそこに金銭の授受などあったら最悪。
国は、少子化対策とともに、この養子問題にも真剣に取り組んでもらいたいものだ。


