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日本人になろう◆『国家の品格』 [2006年05月18日(木)]
国家の品格
藤原 正彦(著)
新潮社
¥ 714
[新書] 18cm , 191P
2005-11 / ISBN:4106101416

かなりの勢いで売れているらしいという新聞記事を読んで、買ってしまった。読んでみて、売れているのが分かる気がした。今、日本人が心の底で、こういうものが必要だろうな、と思っているであろうものをズバリと言い当てているのだろう。

一番笑ったのが、「古池や 蛙飛び込む 水の音」という俳句を聞いて、外国人は《古い池の中にに蛙がドバドバドバッと集団で飛び込む光景を想像するらしい》という下りだった。私にはそんな風に想像する人がいることを想像できなかったのでびっくりした。これが、国による美的意識の違いというものなんだろうか。海外の人が蛙がドバドバを美しいと思ってるわけではないよね。日本人は、趣のある草の茂った古い池に蛙が一匹ちゃぽんと飛び込む、その光景に風情を感じるけれど、海外の人にはそれはよくわからない、ということなんだろうね。

私は、愛国心というのは、イコール、ナショナリズムなのだと思っていたのだけど、もう一つ、パトリオティシズムという意味もあるらしい。どちらも英語での実際の意味合いはよくわからないけれど、ナショナリズムというとなんだか不穏な感じがして好きではなかった。この著者はナショナリズムではなく、パトリオティシズムが重要だと言う。《パトリオティシズムというのは、自国の文化、伝統、情緒、自然、そういったものをこよなく愛すること》なんだそうだ。これなら納得が行くし、これぞ今の日本人に足りないものなのではないかと思った。著者はこれを愛国心とは言わず、「祖国愛」と言う。

一般的に、海外での生活を経験した人のほうが、自分の国(日本)に対する愛着が強くなる傾向がある気がする。私は海外生活はしたことがないけれど、実家を出て3年ほどひとりで暮らしてみて、自分の生まれ育った場所がいかにいいところだったのかがとてもよくわかった。そういう意味で、ひとり暮らしは私の人生に於いてとても大きな意味を持つものだった。

よく、海外に行ったものの、日本のことを聞かれても全然答えられなかった、という話を聞く。海外に行く日本人は海外のことはよく勉強していくけれど、肝心の日本のことは知らないのだ。英語がぺらぺらとしゃべれるのが国際人ではない。自分の国を愛し、文化や歴史を理解し、それを海外で堂々と披露できれば、海外で認めてもらえるのではないかと思う。

だから、著者は小学校で英語を教えるなんてとんでもないと言う。その前に、国語や算数など、教えなければならないことは他にある。私も同感。

教育ということで言えば、今は先生を尊敬しない。先生でも親でも友達感覚なのがよいというような風潮がある。これが秩序を乱しているのではないかと私は思うのだ。著者は平等と自由は共存しない、と言っている。なんでも平等、なんでも自由というのは矛盾が生じるのだ。そうだ、そうだと思いっきりうなずいてしまった。

社会にはある程度の格差や秩序が必要なのだ。格差があっても、上のものが下のものを守る、秩序ある社会というのができるはずだと思う。国にはエリートが必要だと著者は言う。頭がよいだけではない、真のエリート教育が必要なのだそうだ。そうして養成されたエリートが国を動かす。それは利己的なことではなくて、国や国民のために命も捧げるようなエリートならば、国民はその判断によって守られるのだ。

著者は数学者だが、この本には情緒や形や美という言葉が何度も出てくる。優秀な数学者は美しい場所で生まれ育った人が多いそうだ。数学と美というのは繋がっているらしい。それは、なんとなくわかる気がした。数学というのは答えは一つしかないのだろうけれど、そこに至る過程というのはいろいろあるのだろう。

私は理数系は不得意だったので、よくわからないのだけど、美しい数式とそうでない数式というがあるというのは分かる気がするのだ。絵を描いていて、直感的に、ここにはこの形、この色、それ以外は考えられない、という場合がある。数学でもそういう直感というのが働くのことがあるのだと思う。答えはわからないけれど、直感的にここにはこういうものが入る、と思うと、それが答えに繋がったりするのではないだろうか。それは、たぶん、数学者の美意識の高さなのだ。

日本という国は、すばらしい文学を多く生み出している。文学作品が多いというのはよく知らなかったのだけど、著者が言うにはそうらしいのだ。海外と比べて高度な文学作品が多いらしい。四季があり、美しい田園風景があり、武士道を元とする立派な道徳観がある。それは、世界の人々に誇れる文化であり、賞賛されるべきものなのだ。しかし、当の日本人たちはそういうものの良さを忘れている。いまこそ、それらの良さを再認識して、日本人としての誇りを取り戻し、国際社会での日本の役割を果たすべきだ、と著者は言っているのだ。

この本は日本人の自尊心をくすぐる。自分たちは外ばかり見ていたけれど、実は足下にこんなにもたくさんの宝物を持っていたのだ。それらのホコリをとりはらい、磨き、再び輝きを取り戻させなければいけない。そう思うと、さあ、やるぞって、なんだか元気が出てくるよね。これが、この本が売れている理由かもしれない。

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