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おんなの生き方◆『一豊の妻』 [2006年03月21日(火)]
一豊の妻
永井 路子(著)
文芸春秋
¥ 500
[文庫] 16cm , 277P
1984-01 / ISBN:4167200155

戦国から江戸時代に生きた女性たちを描いた短編集。永井路子は初めて読んだのだけど、なんというか、女性のとらえ方が甘すぎず辛すぎず、ちょうど良い味付けだった。

女性というのは、バカだけど賢い。女性であるというだけで運命に翻弄されることもあるのだけど、それを逆手に取ってしたたかに生きている。現代のように男性と肩を並べて働いたり、歴史の表舞台に出たりはできないけれど、だまって男性に隷属するだけの存在でもない。彼女たちなりに自己主張しつつうまく世渡りしているのだ。そしてときには本人にそれと気付かせずに男たちを操縦していたりもする。そういうことができるのは実は女性の醍醐味なのかもしれない。

最後の一編、「一豊の妻」は戦国武将の山内一豊と妻の千代が題材。同じ一豊夫婦を主人公にした司馬遼太郎の『功名が辻』と比べて読むと面白い。一般に、千代は内助の功で夫の出世に貢献し、賢妻とされている。

嫁入りのときの持参金十両を鏡箱に隠しておいて、米升をまな板代わりにして貧乏に耐え、ここぞというときに夫のために名馬を購入する。それが信長に認められて一豊は出世するという逸話が有名だ。その他にもいくつもの逸話が伝わっている。

『功名が辻』では、一豊はさして取り得のない凡庸な男で、一豊の出世はすべて千代の裁量だった。ところが、「一豊の妻」では逆に千代のほうが凡庸で、一豊は才気走ってはいないけれど、そこそこ頭の切れる男のように描かれている。馬を飼った十両は実は一豊が貯めたものだったが、給料の少ない部下からの反感を買わないように、「千代の持参金で買った」と一豊自身が触れ回ったことになっている。実際はどうだかわからないが、私などはこういうエピソードのほうが好きだ。千代があまりにも賢妻すぎると、女としては嫉妬してしまう。司馬遼太郎と永井路子の千代のとらえ方の違いというのは、やはり男女の目線の違いなのだろうか。

一豊は生涯側室を持たなかったので、夫婦仲のよいカップルとしても有名らしいが、この短編ではそれほどでもなかったことになっている。このほうが現実味がある。あまりに仲がよくて、年をとってもいちゃいちゃしているカップルなんて嘘っぽいではないか。まぁ、そういう人たちもいないことはないし、それはそれで羨ましくもあるのだけど。

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