 梶尾 真治(著)
朝日ソノラマ ¥ 1,050 [単行本] 2005-07 ISBN:9784257790532 / ASIN:4257790539「クロノス・ジョウンター」というタイムマシンを巡る短編3編を収録。タイムマシンというと夢の機械だけど、このクロノス・ジョウンターには欠点があって、未来にいられるのは短時間で、そのあとは反動で現在には戻れず、より未来にはじき飛ばされてしまう。
そんな伏線がうまく物語を動かしている。過去や未来に旅するのは夢の世界だけど、そのマシンに欠陥があるというのはなんだかちょっぴり現実的で面白い。しかも、話が進むにつれて、その欠陥についてのデータが集積されていつの未来にはじき飛ばされるか正確にわかるようになるのだ。
一話の「吹原和彦の軌跡」は主人公が恋する女性を事故から救うために何度も時を超える。ここまで想われたら本望かもしれないけれど、ふたりは添い遂げることはできない運命だとわかっていて助けに行く主人公にはちょっと鬼気迫るものがあって怖い。ストーカー的なしつこさを感じてしまってあまり共感できなかった。
二話の「布川輝良の軌跡」は時を超えて出会ったふたりのラブストーリー。今度は女性が過去から未来へ男性を追いかけるのだけど、これは最後にハッピーエンド。ふむふむ。
三話の「鈴谷樹里の軌跡」は幼い頃に亡くなった憧れの人を病から救うために未来の治療薬を持って過去に飛ぶ女医の話。三話の中ではこの話が一番好き。いろんな伏線が、最後にぴったりあって、うーん、すっきり! だって、こういう話にありがちな、矛盾点がそのままにされて終わっちゃうのかななんて思っていたら、なんと最後に私が思っていたナゾがちゃんと解決されてハッピーエンドに貢献していて、気持ちよかった。ちゃんと作者の計算ずくの伏線だったらしい。
一話は昨年末の演劇集団キャラメルボックスのクリスマス公演『クロノス』の原作。大筋は同じだけど、だいぶキャラメル風味に味付けしてあった。
三話は映画『この胸いっぱいの愛を』の原案らしい。映画のあらすじや登場人物を見てみたら、原作というより原案という感じ。主人公が男になってて、助けるのは女性。クロノス・ジョウンターも出てこない。でも面白そう。
タイムマシンとかタイムトラベルって、夢だからいいのであって、ほんとにそれができちゃったらめちゃくちゃになっちゃいそう。そんなものを研究している人っているのかな。もしかしたら今もひっそりと未来からやってきた人たちが私たちと一緒に暮らしていたりして。それはそれで楽しいかもしれない。
演劇集団キャラメルボックス
『この胸いっぱいの愛を』
 梶尾 真治(著)
朝日ソノラマ ¥ 1,260 [単行本] 2006-06-23 ISBN:9784257790556 / ASIN:4257790555 |