切ない、叶わない恋の物語。島本理生は初めて読んだ。この作品は特に評判が良かったので、最初に読んでみた。若いのにこれだけ書けるってすごいと、素直に感心した。才能のある人なんだね。
登場人物それぞれが薄っぺらくなくて、ちゃんとリアルに生きている感じ。人って、一言でどういう人って語れない。ひとりの人の中にいくつもの人格があって、一面だけではわからない。そういう複雑なところが描かれていて、妙にリアルなのだ。
自分の中に抱える矛盾をどうしようもなかったり、他の人からこう見られたいという願望と、実際の自分の感情とがうまくかみ合わなかったり。好きなのにその気持ちが伝わらない。好きだと言われても信じられない。すれ違ってうまく行かない。恋愛だけじゃなくて、日常生活でも、家族でも友人同士でもそういうことってよくある。
なんだかね、いろいろあるよね。そういうこともあるよね、って思いながら読んでしまった。
この主人公は高校時代の教師とお互いに惹かれあうのに、結局は別れを選ぶ。それも二人とも納得したうえで。この物語は、この二人が結ばれないからこそ魅力的なのだ。結ばれてしまったらただのラブストーリーで、最後、よかったよかった、で終わっちゃう。
結ばれないからこそ、共感を得るのだ。傷付き方の度合いは違うかもしれないけれど、誰にでもこういう経験はあると思う。いくら想っても慕っても、うまくいかない関係。感情だけで突き進めない大人の世界。なんだか怖いけれども。
それにしても、私はこの主人公がものすごく羨ましい。だって、これだけ人を想ったという経験があるっていいなぁって。こんなになりふり構わず誰かに夢中になれるってすごい。そしてなにより、そんな風に想った、そして今でも忘れられない男がいるって分かった上で、彼女を受け止めて結婚しようと言ってくれる男性がいることが羨ましい。 |