怪奇時代小説なのかと思ったら、途中から近未来SFバイオレンスみたいになってびっくり。夢枕獏のバイオレンスものって読んだことないし、あまり読みたいとも思わないのだけど、ああ、こんな感じなのねってちょっと思った。やっぱり読まなくていいや。
「黒塚」というのは能の演目らしい。安達ヶ原の鬼婆の話といえばもう少し分かり易いかも。実の子を殺した負い目から人の生き血を吸って生き延びる鬼婆となった女の話。
それを元に手塚治虫が『安達ヶ原』というマンガを描いているらしいのだけど、原作の「黒塚」と手塚の『安達ヶ原』の二作にインスパイアされて描かれたのが夢枕獏の『黒塚』なんだそうだ。
手塚の『安達ヶ原』は未来ものらしい。読んでみたくなった。
夢枕版『黒塚』は人の生き血を吸って生き延びる男女の物語。男は源義経。山中で出会った女と愛し合い、女の生き血を飲んで不死となった義経は従者弁慶の裏切りによって首をはねられるが、首だけで生き続ける。たびたび記憶を失いながらも長い長い年月を生き続ける男。いつしか女と別れ別れになってしまう。記憶を取り戻そうと、荒廃した未来都市で闘いを続けながら女を捜す男。あとがきや解説ではこの物語は愛し合う男女がお互いを追い求める恋愛小説なのだと言っている。確かにそうかもしれない。
不死というのは人々の憧れなのかもしれないが、生き血を吸いながらというのがオドロオドロしい。人はいつか必ず死ぬことがわかっているからこそ、限られた時間を一生懸命生きようと思うのよね。だから逆に不死の主人公たちは不死であることに苦悩するわけなのだ。どちらのほうが苦しいか、なってみないとわからない。
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