15歳の少年と36歳の女性。親子ほども年が違う二人が肉体関係を持ち、密会を重ねる。やがて女性は少年の前から突然に姿を消してしまう。成長した少年がふたたび彼女と出会ったのは法廷だった。
少年と中年女性(読む前はそう思っていたけど読んでみると36歳。微妙…)の鬱屈した愛の物語、なのかと思っていたら、違ってた。うーん、ある意味合ってるんだけど、私が思っていたのとは違ってた。もっと倒錯した感じなのかと思っていたんだけど、意外とまともというか直球というか。うまく言えないけど。
冒頭での少年と女性との関係はちょっと倒錯している感じがするけれど、女性と別れてしまったあとの少年(語り手)は常に傍観者的な立場で彼女のことを見ている。それがなんとなく読んでいる方としても距離感が絶妙で、傍観している少年(この時点ではもう大人だけど)をさらに傍観している読者という感じだった。
淡々としているのになぜか心の奥深くをえぐるような物語。カギになるのは女性ハンナのある秘密なのだけど、これ、訳者あとがきでも書評でも伏せられている。伏せなくてもいいと思うのだけど(もうベストセラーだし)、なぜか私の読んだ書評ではみんな伏せてあった。ので、ここでも一応、伏せておくことにする。
少年がハンナに本を朗読する。その関係は再会後にも復活する。朗読という行為だけを通してハンナと繋がりを保つ語り手の(元)少年。なんだか静かな、静かな関係。会話でもなく、手紙でもなく、他人の書いたものを読むというだけ。それでも繋がりは保たれる。
ナチス時代の収容所看守というハンナの過去。そしてその罪。それから彼女の秘密。少年の目を通して描かれるハンナという女性。淡々としたその視線から彼女の心の機微も伝わってくるよう。
私はかなり前半で、ハンナの秘密は薄々分かってしまったのだけど、その秘密に苦しみながらもそれを受け入れて甘んじて暮らすハンナという女性はいったいどういう生い立ちだったのだろう、と想像を巡らしてしまった。だけど、私にはそれはよくわからなかった。彼女が強い人間なのか、弱い人間なのかも判断がつかない。ある意味、強く、ある意味、弱い人間なのだと思う。彼女の精神が高潔であるというのは強く感じた。正直で、まっすぐ。秘密を隠そうとするけれども、それは彼女の高潔な精神がそうするのが正しいと判断した結果なのかもしれないと思う。
そして、そのハンナを深く理解していると思われる語り手の少年。彼の行動が正しいのか間違っているのかわからないけれど、ハンナを一番よく理解していた人間ではあったはず。しかし、その彼も予測できなかった彼女の死。その死が彼女の高潔さをさらに強調しているような気がする。
|