自閉症というと私の子どもの頃までは親の育て方が原因で後天的になる疾患だと思われていたそうだ。そのため、自閉症の子どもを持つ親はいわれのない中傷を受けたり、親戚や周りの人たちから冷たい態度を取られたりしたのだ。そしてたぶん、自分自身をも責め、辛かっただろうと思う。その誤解が解けた今でも昔の思いこみを信じている人たちが多いだろうことは想像できる。
今でも自閉症の子どもを持つ親は周りから誤解され、親の育て方が悪いために子どもが自閉症になったと言われたり、思われているところがあるのだろう。あれだけ大騒ぎしたハンセン病にしたって、未だに宿泊拒否するホテルがあるくらいなのだから、自閉症についての正しい知識を持っていない人たち、しかも昔の誤解をそのまま信じている人(これが一番困りもの)たちがどれだけ多いか想像に難くない。
しかし、最近では自閉症は先天的な脳の疾患であることがわかっている。その症状や疾患の程度は患者によってまちまちだそうだ。知能の遅れがある人もいれば、高機能自閉症と言って知能の遅れのない人もいる。こだわりが強いというのも自閉症の特徴だけれど、そのこだわりも人によって違うらしい。光や音など外部からの刺激に敏感だったり、周りの人にはよく分からない理由(本人的には理由がある)で癇癪を起こしたりするので、わがままだと思われてしまったりするらしい。
自閉症という言葉は知っていても、どんな症状なのかを正確に知っている人は少ないと思う。私も詳しくは知らない。自閉的という言葉から連想されるのは、周りとの接触を嫌ってひとりでいるのが好きな内向的な人というイメージがあるけれど、自閉症はそんなに簡単なものではなくて、私たちには想像できないような自閉症の人特有の不思議な世界観があるらしい。
ものすごく簡単に言ってしまうと、人とのコミュニケーションを取ることが極端に苦手なのだ。私たちの間で普通に交わされている自然な合図のようなものもうまく読み取れない。
だけどきっと、何か私たちとは違う世界を見ていて、彼らなりの世界観があるんだと思う。彼らにしたら私たちの世界は見られない訳で、お互いに違う世界なのだ。だから、どちらかが劣っているとかそういうことではないような気がする。でも、彼らは少数派なので時に誤解されたり虐げられたりしてしまうのだ。
以前に、ともさかりえが自閉症の女性を演じていたドラマで見た記憶があるのだけど、たとえば、初対面の相手に会って挨拶をして、相手から手を差し出されたら普通は「握手しましょう」という言う意味だと分かるのだけど、自閉症の人にはその手が何を意味するのか分からないらしい。人の表情の意味も分からないので、笑顔や泣き顔をイラストで書いてあるものを見てどんな意味なのか覚えるというのもあった。
『光とともに…〜自閉症児を抱えて〜』は現在、ドラマ化されて放映中だが、もともとは原作であるコミックが話題になったもの。普通に結婚して、普通に出産した女性が主人公。子どもが自閉症であることがわかって、周囲の誤解と闘いながら夫や家族と協力して懸命に子育てする姿が共感を呼んだらしい。自閉症であろうと無かろうと親が子どもに注ぐ愛情は同じ。子育て中の人にもこれから子どもを産み育てようとする人にも何か訴えるものがあるのだろうと思う。
子どもが自閉症であるということで、様々な障害があるのだけど、子どもに健やかに育って欲しいという思いは他の親と一緒。自閉症だからと言ってカギのある部屋に閉じこめたり、できることもさせなかったり、甘やかしたり、他の子どもと接触させなかったり、特別なことをしない。社会の中で普通に生きていける力を付けて欲しいと願っているのだ。そのやり方は他の子どもとは違うのかもしれないけれど、社会の中で生きていく力を付けるという目標は変わらないのではないかと思う。
周囲の人の中でも、積極的に協力してくれる人たち(ボランティアや学校の先生など)と、暖かく見守る人たちと、逆に見て見ぬふりをしたり冷たくあしらう人たちと、いろんな人が登場する。私の身近に自閉症児を抱える人がいたとして、果たして私はどんなことができるのだろうかと考えてしまった。
積極的に手助けをしてあげることは素晴らしいけれど、そうそう人のことに構っていられないというのも本音である。だからと言って、見て見ぬふりをするのは冷たすぎるし、逆に分かったようなことを言うのも失礼にあたるような気がする。やはりその人にしか分からない辛さもたくさんあるのだろうし、子どもを持たない私なんぞが何か慰めたり、アドバイスしたりするのはお門違いだ。と、すると普段はその子どもと家族の存在をそっと心に留めておいて、いざという時には協力するというのが一番いいのかもしれない。
自閉症だけではなくて、障害を抱える人たちや社会の中で弱者と言われる人たちを自然に受け入れられる社会というのはどういうものなのかと考えてしまった。今、自分が体調を崩している所為もあるのだけど、自分が弱者(少数派)の立場になった場合と、その逆の場合、両方を想定していろんなことを考えさせられるコミックなのだった。
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