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「知の巨人」は秘書もすごい◆『立花隆秘書日記』 [2003年10月26日(日)]
立花隆秘書日記
佐々木 千賀子(著)
ポプラ社
¥ 1,575
[単行本] 748hundredths-inches x 535hundredths-inches , 349P
2003-03 / ISBN:4591076598

本屋さんで働いていたとき、立花隆の著書をよく目にしたけれど、あまりにもいろいろなテーマの本を出しているので、いったいこの人の専門はなんなのだろう。この人っていったい・・・。と思っていた。政治、科学、工学、音楽、宇宙、臨死体験などなど、それぞれ一つづつ研究していてもなにやら難しそうなことを平行してやっているというのはすごいなぁと思う。

私が最初に立花隆に一目置くようになったのは、『アポロ13号 奇跡の生還』(新潮文庫)という本を読んでからだった。まだ高校生くらいだったと思う。で、私はずっとこの本の著者を立花隆だと思いこんでいたのだけど、実はヘンリー・クーパーJr.という人が書いた本を立花隆が訳したものだった。なんでそんな風に勘違いしていたのかなと思ったら、文庫版の表紙に著者名よりもでっかく訳者の「立花隆」という名前が。タイトルと同じくらいの大きさ! そりゃ勘違いもするわな。

この本を読んで、立花隆ってなんかすごいなぁと思ったのだけど、大いなる勘違いだったわけだ。まぁでも訳す人っていうのはとっても重要で、この訳の中に立花隆的エッセンスが存分に盛り込まれているのかもしれないから、まぁいいか。

そのあと、大学の時くらいに『インターネット探検』(講談社)を読んで、ものすごくインターネットの世界に興味を持ったのだった。この本ではインターネットのどこがどう面白いのか、立花隆的視点で書かれている。NASAのサイトが面白いとか、アダルトサイトが面白いとか、なんだかインターネットっていままで漠然としていたけれど、具体的な楽しみ方を教えてもらった感じ。私がインターネットを始めたのはたぶん、この本を読んでからだったと思う。

立花隆の著書のテーマには興味があって、書店で何度も手に取るのだけどなんとなく読むまでには至らず、結局いままで読んだのは上記二冊のみ。でもなんだか面白いおじさんだなぁとは思っていた。

宇宙とか、臨死体験とかそういう本については知っていたけど、もともとはロッキード事件、田中角栄について取材していた人だということは今回初めて知った。調べるとその関係の著書が多い。ほんと、首尾範囲が広いなぁ。

で、本書はその立花さんの秘書をしていた人の日記風エッセイ。時期は1993〜1998年というから、私が『インターネット探検』を読んでいた頃だ。本書の中で、立花さんはワープロも使えず手書きで原稿を書くのに、インターネットにはどっぷりはまってしまう様子が描かれている。キーボード操作ができるかどうかとインターネットを閲覧することは別ものなのだ。

この本の中には立花隆の愛すべき人柄が存分に表現されている。と、同時に困ったところも。まぁ、長所と短所は裏表だから取りようによるのだけれど。最近、立花隆批判の本が相次いで出版されているようだけれど、この人はそんなことあまり気にしないんだろうなぁ。しかもその批判というのも揚げ足取りであんまり的はずれっぽいし。

興味を持ったモノはとにかく徹底的に調べて知りたい。それが「知の巨人」と評される立花隆の根本のエネルギーのよう。人に知らせるとかではなく、とにかく自分が納得できるまで知りたいのだ。で、興味がなくなるとすぅっと冷めてしまうらしい。

思うのだけど、たぶん、立花隆くらいの「知」を持った人というのはいっぱいいるのだ。と、言っても私などとうてい及ばないくらいの「知」だけれど。で、どうして立花隆がこれだけ有名なのかと言えば、きっと庶民的なんだと思う。知を追求しつつ、庶民の目を持っているのではないかと思う。難しいことを考えている人は難しい言葉を使いたがる。だけど、本当に難しいのは難しいことを簡単に説明すること。立花隆という人はそれをやっているのだろう。あんまり著作を読んだことがないけれど。

難しいテーマを私たちの身近に引っ張ってきてくれるのだ。インターネットにしても宇宙にしてもなんだかよく分からない遠い存在だったものが、実は生活の中でこんな風に使えるとか、宇宙に行っている人間も私たちの隣にいるような人たちだとか、そんな風に紹介してくれる。だから本が売れるのだろう。

で、立花批判をする人たちはどうしてこんな粗のある本が売れるのか、って思っているのだろうけど、そんなことはたいした問題でなくて、粗があっても難しいことを簡単に知ることができるというのは、知のレベルが違う私たちにとってはとてもありがたいこと。

そういう意味では、立花隆自身の著作にすら難しそうと思って手を出しかねている私にとってはこの秘書日記はとっても入りやすかった。いままで謎だった立花隆という人の全体像が分かった気がする。

まず秘書の公募の話から始まるのだけど、なんと500人の中から1人しか選ばれない。そして選ばれたのが佐々木千賀子さん。学歴不問、主婦もOKという条件での公募でなければ応募してこなかったであろう人材だそうだ(佐々木さんは主婦ではないけれど)。

とにかく広い知識と、情報処理能力、資料の整理能力、マネージメント、雑用などなど立花隆の秘書としてはいろいろな能力が平均的に備わっていないといけない。この本を読んでいるととにかくこの佐々木さんも多ジャンルに渡ってたくさんの知識がある人だと言うことがよく分かる。

オペラが大好きだったり、実はSFおたくだったことがあったり、もちろん政治、科学などにも造詣が深い。なのに、秘書に応募した当時は失業中で、こういう人が野に埋もれて職がなかったりするんだなぁと思った。

そして秘書としては、常に立花さんと一定の距離を保っている。立花隆という人を冷静に見つめる目はときに怖くもあるけれど、同時に尊敬し、愛してもいるのだろうなぁと思う。この本が面白いのは、立花隆礼賛と言った内容でないからだ。立花さんのこんなところが嫌だというのがとてもストレートに描かれている。こんなこと言っていいんだろうか、ってことも。だけど、秘書時代にそれだけの信頼関係のようなものがあって、それがこの本に反映されているのかもしれない。

関連リンク:立花隆の本の世界

アポロ13号 奇跡の生還
ヘンリー,Jr. クーパー(著) 、Henry S.F.,Jr. Cooper(原著) 、立花 隆(翻訳)
新潮社
¥ 540
[文庫] 591hundredths-inches x 433hundredths-inches , 236P
1998-06 / ISBN:4102133119
インターネット探検
立花 隆(著)
講談社
¥ 1,529
[単行本(ソフトカバー)] , 189P
1996-04 / ISBN:4062081784
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