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愚かな人間は戦争を繰り返す◆『命のロウソク』 [2003年02月25日(火)]
命のロウソク―日本人に救われたユダヤ人の手記
ソリー ガノール(著) 、Solly Ganor(原著) 、大谷 堅志郎(翻訳)
祥伝社
¥ 780
[文庫] 15cm x 11cm , 483P
2002-06 / ISBN:4396312989

この本の帯には「本書は少年版『アンネの日記』である」というコピーが。これは宣伝文句としてはよい。このコピーを見てつい買ってしまった。でも内容は、『アンネの日記』とは異なる。ナチスによるユダヤ人迫害の歴史を伝えるという意味では共通するものがあるかもしれないけど。

『アンネの日記』を読んだのは中学生くらいだったかなぁ。日記の内容はあまりよく覚えていないけれど、これをきっかけに、第二次世界大戦、ナチス、ユダヤ人の強制収容所などについて知った。アンネはナチスから逃れるために家族とともに隠れ家に移り住む。最終的には密告されて強制収容所に収容され、そこで姉のマルゴットと共に亡くなった。連合軍が収容所を解放する日は近かった。アンネの父親は生き延びて、戦後、アンネが隠れ家での生活を綴った日記を発見、出版する。この父親が生き延びなければ日記は世に出なかったかもしれない。アンネの日記はナチスの恐怖もそうだけれど、隠れ家のなかでの生活を描いていて、文学的趣きがあったような気がする。

『命のロウソク』の著者は収容所を生き延びて、高齢になってから当時の体験を本にまとめた。ユダヤ人だけを集めたゲットーでの生活、収容所での労働など少年時代の体験を描いている。『アンネの日記』のような趣きはないけれど、著者が直接体験したことが淡々と描かれていて、胸に迫るものがあった。

副題に、「日本人に救われたユダヤ人の手記」とあるように、ビザを発給して多くのユダヤ人を救った杉原千畝氏との出会い、収容所を解放した日系二世部隊についても書かれている。著者自身は杉原氏が救ったユダヤ人の中には入っていないのだけど、著者が触れた杉原氏の人柄、杉原氏が命のビザを発給するに至る過程がよくわかる。そして、最後に著者を救ったのは杉原氏を同じ顔だちの日系二世部隊の兵士だったことから、著者の日本人に対する親近感が伝わってくる。しかし、本書はそれ以上に、ナチスの非道、ユダヤ人の迫害、収容所での悲惨な生活など、戦争の恐怖や人種差別について深く考えさせられる内容だった。「日本人に救われたユダヤ人の手記」というのは日本用に作られた副題だろう。ちょっとやり過ぎかも。しかも、日本語版は原書よりもカットしてある部分があるらしい(訳者まえがきでカットした部分を明示してある)。それでも十分な内容ではあったけれど。

それにしても、ナチスによるユダヤ人の迫害というのはあまりにも悲惨。どうしてこんなことができるのだろうかと思ってしまうのだけど、島国に暮らす日本人には二つ以上の民族が共存する感覚がイマイチよく理解できないのかもしれない。この本のなかで、「キリスト様を殺したのはユダヤ人」というフレーズが何度がでてきた。一般の人がユダヤ人を差別(迫害)するときの理由として、聖書の内容が出て来るというのがなんか変。聖書なんて神話や伝説と変わりないように思ってしまうけど、信じている人にはそれが真実なのかもしれない。そういう民衆の深層心理のようなものをうまく煽って、ユダヤ人の迫害は行われたのかも。そういえば、日本でも在日外国人(特にアジア系?)の差別が未だに根強い気がするけど、それってなにが根拠なんだろう。特に根拠なんかなくても自分と違うものを差別しようという集団意識みたいなものがあるのだろうか。

それにしても、迫害や人殺しの根拠にされてしまう宗教ってどうなの。宗教って人を救うものだと思うんだけど、その逆を行ってる宗教もあるようで、そういうのって悲しい。自爆テロだとか、聖地の取り合いだとか、自分たちの国が欲しいとか、あの民族が嫌いだとか悪いとか、宗教がからむ争いって多い。なんとかならないもんかなぁ。これじゃぁ、救われないでしょう。

ゲットーではユダヤ人は家畜並みの扱いを受ける。逆らえば殺される。もう、従うしかないのだ。それでも、床下に財産を隠したり、外部から食料を仕入れたり、皆したたかに生きている。人間って強い。著者の周りでも何人も殺されたり死んだり行方不明になったりしている。それでも著者は何度も殺されそうになりながらも、生き延びる。これが本当だったらすごい。疑うわけじゃないけど、本当に何度も命の危険にさらされて、間一髪で生き延びているのだ。あの戦争を生き延びた人には、こういう人がいっぱいいるのかもしれない。語らないだけで。

戦争を知らない私などは、もっとたくさん語って欲しいと思うのだけど、当事者は語りたくないものらしい。あまりに辛過ぎるのかもしれないし、この本の著者がいうように、体験したものにしかわからないという気持ちがあるのかもしれない。この著者も長い間沈黙を守っていたのだ。

人間はバカだから、こんなに辛い体験をしているにも係わらず、また戦争をしようとしている。学習能力なさすぎ。きっと何人の子供、何人の病人、何人の市民が犠牲になるだろうという概算まで出しているのに、それでも戦争をしようとしている。戦争で死ぬのは人間だけではない。自然も破壊される。これがかなり大変らしい。自然が回復するのには時間がかかるのだ。一方では医学の研究などで一人でも多くの命を助けようとしているというのに、一方では最新兵器で簡単に命を奪う。弱い人から死んでゆくのだ。戦争をしようとしているエライ人たち、想像力なさすぎなのでは。

●関連図書

アンネの日記
アンネ・フランク(著) 、深町 真理子(原著) 、Anne Frank(翻訳)
文藝春秋
¥ 760
[文庫] 15cm x 11cm , 587P
1994-04 / ISBN:4167114038

※私が持っているのは、皆藤幸蔵/訳(文芸春秋)。昭和59年初版。現在入手不可能かも。

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