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近くて遠い不思議の国◆『北朝鮮拉致工作員』 [2002年11月24日(日)]
北朝鮮拉致工作員
安 明進(著) 、金 燦(翻訳)
徳間書店
¥ 580
[文庫] 591hundredths-inches x 417hundredths-inches , 286P
2000-03 / ISBN:4198912858

先月、日朝首脳会談が行われて、24年前に北朝鮮に拉致された5人の方々が帰国し、にわかに北朝鮮にスポットがあたっている。なんだか最近、ワイドショーでも北朝鮮関連の話題が多いので、朝からテレビをつけっぱなしにして見ていたりする。知れば知る程、不思議の国である。こんなに近い国なのに、なんで今まで知らなかったんだろうという不思議もある。知らないといえばわたしは韓国のことだってあまり知らないのだけど、北朝鮮がこんなに不思議の国だとはほんとに驚きだ。

テレビにもよく登場する、元工作員の安明進氏の著書。工作員というのはスパイのこと。面白いのは、韓国に侵入するのはとても難しくて優秀な工作員が派遣され、日本は簡単に侵入できてしまうのでそれほど優秀じゃない工作員が派遣されるらしいこと。日本の沿岸警備ってほんとに甘いのだ。そして工作員の上陸方法というのもスパイ映画を地で行くような話で、ある意味笑える。笑い事じゃないんだけど。

工作員は北朝鮮国内の各地から選抜される。そして厳しい訓練の末に晴れて(?)工作員となる。その訓練はさながら忍者の特訓のようなもの。水中に長時間もぐる訓練とか、氷りの上に何時間も裸足で立っているとか、何人も相手に戦うとか。そして訓練についていけない人はどんどん脱落してゆく。死者もでるらしい。この訓練に耐えたらほんとに超人のような工作員が出来上がるのがわかる気がする。

で、日本に上陸するのに、水中スクーターで水の中を移動して密かにやってくるのだ。そして、適当な日本人を見つけたら袋詰めにして拉致してしまう。屈強な工作員たちに抵抗できる人は少ないだろう。もし自分だったらと思うと本当に身の毛がよだつ。

北朝鮮というのは、国民の多くが飢餓に喘いでいるというのに、軍事に関してはお金を惜しまない。これを国民が知ったらただではおさまらないのだろうけど、厳しい情報操作で国民がこういう事実を知る事は困難だ。いったいなんなのだ、この国は。

安明進氏によれば、工作員の教育用に、地下にソウルの街を模した巨大な空間があるらしい。そこはネオンサインが輝き、本物のお店があって、そこには韓国から拉致られてきた本物の店員がいて、工作員たちはそこで生活して韓国流の買い物の仕方などを学ぶ。薬屋さんには本物の韓国の薬屋さんがいるという。そのために拉致られてきたのだろうか。徹底している。なんだか、SFの世界のよう。こんなことを本当にやっている国があるのだ。

安明進氏は13才で拉致された横田めぐみさんを北朝鮮で見たという証言をした人物。拉致事件をでっちあげだと言っていた人々もいた時期もあって、そういう人にとっては安氏の証言は嘘だということになってしまっていた。そして、わたしたちには安氏の証言を確かめるすべはないのだから、長い間、どちらの言い分が正しいのかわからない時期があった。そういう時期には、この本に書いてある横田めぐみさんの目撃情報も、その他の日本人の目撃情報も、地下のソウルの街も、工作員の教育方法も、信ぴょう性が疑わしかったのだろうけれど、今、こうして拉致事件が現実にあったということが分かったら、この本の内容の信ぴょう性が高まったのは事実だろう。ただし、日本人拉致に関しては伝聞もかなり混じっているのですべてが正しいかどうかは疑わしい。

それにしても、拉致以外にも麻薬密売や紙幣偽造などの犯罪を国家規模でやっているという話は耳を疑う。知れば知るほど不思議の国なのだ。もし、この国の体制が崩壊したら、ものすごい混乱が起きるだろう。そして、地下の要塞を含めて、いろんなものがでてくるだろう。不謹慎かもしれないけど、いったい何がでてくるのか、ちょっぴり楽しみでもある。

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