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アリス的正統派ファンタジー◆『裏庭』 [2002年11月07日(木)]
裏庭
梨木 香歩(著)
新潮社
¥ 620
[文庫] 591hundredths-inches x 417hundredths-inches , 412P
2000-12 / ISBN:4101253315

そんなジャンルがあるのかわからないけれど、「正統派」ファンタジーと呼びたくなるような作品。以前に読んだ同じ作者の『西の魔女が死んだ』はそのタイトルとは裏腹に、現実世界から逸脱しないファンタジーだった。この作品の世界観がとてもよかったので、同じ作者の作品を読んでみようと思ったのだった。

私は現実世界から飛び出してしまうファンタジーが苦手。例えば『不思議の国のアリス』。ディズニーのアニメ映画などを見ているので大体のストーリーや世界観は知っているのだけど、未だに原作を完読したことがない。何度か挑戦した記憶はあるけれど、イマイチ入り込めず、途中から他の本に夢中になって、そのまま放棄するのがオチ。アリスの世界というのは、もう、完全に現実世界から逸脱していて、現実世界のルールが通用しない世界なのだ。そこが面白いところでもあるんだけど、私としては、その最低限のルールがない、というのが耐えられない。なんでもありの世界になってしまう。荒唐無稽、はちゃめちゃ。次に何が起こるかわからない。アリスがどんなに変な生物に出会おうが、どんなにおかしな出来事が起ころうが許されてしまう。なんでそんな生物がそこにいるのか、なんでそんな出来事が起こるのか、そんな説明はなし。わたしってば、そういう細かいところが気になってしまうから、その説明もなくどんどん物語が進んで行くと、読んでいてなんだかイライラしてしまう。なんでそうなるの?って。

私が本を読むのは、きっと、知らないことを知ることができるから。ノンフィクションとかってそのストーリーの中に自分の知らなかった事実がいっぱいつまっているから好きなのだ。だけど、ファンタジーというのは、「知っている事実の組み合わせの妙」のようなところがあって、「人間が」「空を飛ぶ」とか、「鳥が」「深海に住む」とか「太陽が」「二つある」とか、新しい事実を知るというよりは、作者の空想力を楽しむという感じ。私はそれが苦手なのだ、きっと。

で、この『裏庭』は割と『不思議の国のアリス』の世界に近かったりする。少女が別世界で冒険するのだ。『西の魔女が死んだ』のような「現実世界から逸脱しないファンタジー」を期待していただけに、別世界に行ってしまったときには正直がっくりした。しかし、アリスとちょっと違うのは、物語全体が空想世界で終わるのではなくて、ちゃんと現実世界との接点があって、物語は現実世界での少女の母親たちのストーリーと、空想世界での少女の冒険とが交互にからみあって進んでゆく。

少女の冒険のストーリーはロールプレイングゲームのよう。解体された龍の身体を探して目的地を巡る。巡りながら、いろいろな体験をして少しづつ成長する少女。そして最後には見事に目的を達成し、現実世界に戻って来るのだ。

心に傷を負った少女とその母親。それぞれに誤解があったりトラウマがあったりして上手く心を通わせられない。そんな二人が空想世界と現実世界でそれぞれに心の葛藤をして、最後には現実世界でお互いを理解しあう。

『西の魔女が死んだ』でも感じた、西洋風のグリーンの庭を思わせるような雰囲気は『裏庭』の中にもちゃんとある。舞台が庭のある洋館で、空想世界は自然を感じさせてなんだか清清しい感じ。この雰囲気が「正統派」ファンタジーと呼びたくなる理由かもしれない。

西の魔女が死んだ
梨木 香歩(著)
新潮社
¥ 420
[文庫] 591hundredths-inches x 417hundredths-inches , 226P
2001-07 / ISBN:4101253323
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